東京高等裁判所 昭和35年(ラ)630号 決定
不動産の競売手続において競落許可決定確定後競落人が競落代金を完納したときに発せられる不動産引渡命令は、債務者または所有者(担保提供者)の所有物件に対する売却手続において、競落人が取得した所有権の実現を、申立をまつて占有取得という面にまで及んで、その手続中で発せられるこの裁判によつて簡易かつ迅速に行い、その手続本来の使命を果そうとするものであり、競落人に与えられた執行法上の権利にかかるものと考えられるから、競売手続に付随してされる執行の方法たる裁判であつて、債務名義のひとつではないと解するのが相当である。この競落人が有する競落不動産の引渡を請求しうる執行法上の権利は、競落人が競落不動産を第三者に譲渡し、その旨の登記を経たとしても、当然には消滅しない。この場合、競落人は、みずから右不動産の引渡を受けさらにこれを譲受人に引き渡す義務と必要とから、その義務の履行のために、占有者に対する引渡命令を求めうるのであつて、譲受人としては、訴をもつて別に実体法上の引渡請求権を主張するのは格別、当該競売手続において、直接自分自身への引渡命令を求めることができないものと解すべく、なお、右譲受人は、競落人が得た引渡命令について承継執行文の付与を求めることができないことは、以上の引渡命令の性質から当然といわなければならない(なお、競落人が引渡命令を得た後におけるその一般承継人についても改めて引渡命令を求めるべきであつて、承継執行文付与の手続によるべきものではないというべきである。)。抗告人の所論は、右に反する見解に立つものであつて、すべて採用することを得ない。
(鈴木禎 中村 荒木)